JR品川駅内のコンコース。そこに並べられた「今日の仕事は、楽しみですか。」というデジタルサイネージが、批判を受けて1日で終了になった。
 実は企業の人事担当者の間では、日本人が世界でも有数の「仕事を楽しみにしていない国民」であることは、ずいぶん以前から常識となっている。
 多くの日本人にとって仕事とは生活のど真ん中であり、「人生の中心」でもあるので、それがなくなってしまう、減っていくことが何よりも恐ろしい。だから、最低賃金以下しか払えず、ビジネスモデルも破綻した企業であっても、・・とにかく「倒産しない」ことが「善」である。
 真面目な日本人は、・・カネのために働くのではなく、「働く」こと自体を目的化して、「やり甲斐」「働く楽しさ」を重視しているが、なぜかちっとも苦痛が和らがない。むしろ、カネ目当てで働く国の人よりも遥かにメンタルをやられて、「今日の仕事は、楽しみですか。」という問いかけに、不快になったり、心を傷つけられたりする人もたくさんいる。
 客観的に見れば、「人は金のためだけに、働いているわけではない」という信仰がもたらした苦しみであることは明らかだ。宗教は人を救うが、時にその排他性や独善性が人を苦しめる。日本の「働き方改革」がなかなかうまくいかないのは、この視点が欠けているからだ。